例えば画面と画面とのつなぎかた。これを専門用語でトランジションと呼びますが、iPhoneではある画面から別の画面へ切り替わる時に、実に巧妙に機能するアニメーションが挟み込まれています。例えば、ホーム画面のアイコンの1つをタップすると、そのアプリの画面が奥からビュンと拡大されてくるエフェクトが流れます。これはほんの一瞬で、気づきにくいのですが、このアニメーションによってユーザーは「あ、いま起動したんだ!」と錯覚します。「何てキビキビした動作なんだ」と感動すら覚えるのです。
しかし、実際には、この最初にビュンと拡大される画面は、アプリごとにあらかじめ用意された静止画像をシステムがアニメーション表示しているに過ぎません。実際に起動に入るのはこの後です。だから、アプリは、画面がビュンと広がってから、ワンテンポ遅れて操作できるようになります。
本来は、アニメーションを入れた分、時間をロスしているはずですが、アニメーションを挟むことで、ユーザーは直前の画面から思考を途切れさせずにアプリを起動した後の作業に頭を切り替えることができます。
Appleで初代Macintoshの開発に携わったジェフ・ラスキンの研究によれば、画面全体がパッと切り替わると、人間がそこに何が映っているのか認識して実際の作業に頭を切り替えるまで、3秒から9秒くらいかかるとされています。しかし、画面が滑らかに切り替わった場合、人間は思考を途切れさせないのでそうした「頭の切り替え時間」がかからないことになります。また、アプリを終了してホーム画面に戻るときは逆にアプリの画面が画面の中央に小さくなって消えていくエフェクトで終了します。これも、同じように思考の切り替え時間を減らすための工夫です。
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